現代子供と教育研究所・下村 昇
「これは何をしているのかな?」「この絵はなあに?」
本を広げて、子どもにたくさん話しかけができましたか?
子どもから言葉を十分に引き出せたら、さあ、今度はひらがなを書かせてみましょう。
ひらがな文字は四十六文字ありますが、その中で「あ・お・さ……」などのように、横棒から書き始める字が二十二字あります。約半数です。そして、縦棒から書き始める字は「は・し・ね……」など十一字です。ですから、ひらがなの書き順を覚えるには「よこぼうで……」とか「たてをかき……」などと、唱えながら書かせる方法は有効な方法です。こうして口で唱えながら書く方法を「口唱法」(R)といいます。
また、「な・ぬ・ね・ま・る」の字は最後がきちんと丸めてあれば、ほかの字と間違えることはありません。こうしたところがひらがな指導のコツなのです。そのために口唱法では、これらの丸めるところを「たまごがた」と唱えるようにしてあります。
ま……よこにほん たてのしりふり たまごがた
ぬ……みぎななめ ひだりななめで もちあげて ぐるっとまわして たまごがた
などのように、唱えながら書かせるのです。
ひらがな指導では、こうした字よりも「い」と「り」、「て」と「こ」などのように、書き分けのむずかしい字に気をつけなければならないのです。
い……ななめで・しゅっ むかいに とん
り……たてぼう・しゅっ むかいあわせで もひとつ ぴゅう
こ……よこぼう・しゅっ すくって とん
このような方法ならば、どんな子どもでもきちんとした字形で、一字一字の書き順と字の形を苦もなくマスターしてしまいます。この例でおわかりのように、口唱法を唱えるには三つの言葉が大事です。
ぴゅう……スーッとのばして「払う」ことを表す。
と ん……力強く抑え、「止める」ことを表す。
しゅっ……小さく「はねる」ことを表す。
この調子を覚えることによって、楽しみながら書けるようになります。